福岡県筑後市の社会福祉法人 筑後市社会福祉協議会

「今の自分のままでいい、と思えること」

「『○○くんのお姉ちゃん』と言われ、私の名前は呼ばれない」

「療育機関に行くと、皆私を通り過ぎて、弟の方へ行く」

「私は弟の付属品なの!?」

障害のある人のきょうだいたちの声です。わずかながらですが、きょうだい支援に関わり、これまで、そんな話はたくさんお聴きしてきました。

だからでしょうか。

「弟が不登校になった時、先生に『何で弟は学校に来ないんだ?お前は家族だろう?』と言われたんですよね」という話が気になってしまって。

不登校の子が心配なのも分かるのですが、先生の目の前にいる生徒も一人の子ども。この子はどんな気持ちになっただろう‥。

考えてみると、「きょうだい支援」の存在が、知られていないから、こうした出来事が起こるのかもしれない。

現に、福祉職の人と話す中でも、「きょうだい支援って何ですか?」と尋ねられる場面が多々あります。

あるきょうだい児は「支援者ではなく理解者がほしい」と言いました。この言葉はとても重く、そして的を射ているのではないか。そう思うのは私だけでしょうか?        (善)

「今の自分のままでいい、と思えること」

 最近の「かたる~む」には、毎回3,4名の方が来られています。皆さん精神面に何らかの不調を抱える人たちです。

 仕事している人、子育てや介護をしている人、調子を崩して退職した人、最近精神科に通い始めた人…。様々な立場の人が集まり、たわいない出来事を話したり、悩み事を他の人に相談したり、ただ皆さんの会話を聞いたりと、思い思いにゆったり過ごされています。

 以前参加された方は「ここに来ると、焦らず自分のペースでいいんだと思える」と話されました。精神的な障害を持ちながら生活する中では、周囲との差や以前の自分との違いに悩み、「前進しなければ」「良かった時の状態に戻らなければ」と焦り、生きにくさを抱える人も多いようです。

 生きやすくなるためには、変わらなければと頑張るだけではなく、居場所や人との出会いによって、今の自分のままでいい、と思える瞬間が大切なのかもしれません。時には休息しに立ち寄ってみませんか?            (喜)

「寄り添い続けること」

 先日ある写真家の写真展へ行きました。彼女は、12年間、毎月11日の月命日に東北へ向かっています。

 13回忌となった今年、出版した写真集のインタビューで「あれほどのこと、乗り越えられない。乗り越えるのではなく抱きしめる。そんな気持ちで通っている」と語っています。

 また、その写真家を知るきっかけとなった福島県出身のシンガーソングライター。彼女もまた福島をはじめ、熊本の南阿蘇などでのボランティア活動を行なっています。

 「自分にできることがなくて、ボランティア活動に参加するのが怖くなったこともあった。でも、沢山の地域の人と出会い自分自身が元気をもらっていることに気づいた。一緒にこたつに入ってお酒を呑んで…今はその人たちに会いに行っている」と、ライブのMCで語っていました。

 当事者でないと分からない気持ち。それでも、直接会って、見て想像する。震災だけでなく、誰もが生きやすいまちづくりには大切なことだと思います。当事者でなくても寄り添い続けることはできる…、2人の言葉に改めて気づかされました。(実)

「言葉を合わせる作業」

 近所のスーパーにて。小学生の娘たちが「ジュースを買いたい!」と言うので、店内で別行動になりました。

 そして数分後。ジュースコーナーへ行ってみると・・。

 娘たちと高齢の女性が、双方で困った顔してる!そして、娘たちは黙り込んでいる!

 話を聞けば、子どもだけで買い物に来ていると思ったらしく、心配して声をかけてくださったようでした。

 「気にしていただき、ありがとうございます」とお礼を言い、この女性と別れた後、娘たちに「なぜ黙ってたの?」と尋ねると、「何をしゃべってるか分からなかった」と。

 それを聞いてハッとする。

 仮に本当にトラブルがあり、声をかけてもらっても、何しゃべってるか分からない、ということ?

 我が家は夫婦とも県外出身。筑後の方言は、子どもにとって馴染みのない言葉です。加えて、世代によって言葉が違うのも当然です。

 だから多世代交流や移住者交流が大事なのか、と感じた瞬間でした。

 言葉を合わせる作業が支え合いの土壌になっていく。そんなことを学んだ出来事でした。        (善)

「つながりあえる幸せ」

 人間関係が豊かな人は幸福度が高い。一方、人の悩みの多くを占めるのも人間関係である」ある講演で話された言葉です。

 一昨年、子ども会の役員をしてほしいと声を掛けていただきました。当時の私は引っ越したばかりで地域のことも分からない、知り合いもいない状況で、地域の人とつながりたい、という思いで引き受けました。

 各地では会員が減り解散する子ども会も増えているそうです。高学年になったら役員をしないといけない、みんなで計画したり準備したり大変そう…など、わずらわしさから敬遠する人も多いのだとか。

 初めて地域の役を経験し、他の役員と連絡を取り合ったり、話し合いや準備に参加したり、大変だと感じることもありました。しかし知らなかった地域のことが分かり、知り合いも増え、充実感もあります。

 人と関わり合うことは、幸福感と辛さ、相反するものをもたらす…冒頭の言葉を体験をもって感じました。人間関係で生まれる負の面もお互いカバーし合って、つながり合えた幸せをみんなが実感できるようなまちになったらいいな、と感じています。 (喜)

「地域のつながりが生まれた瞬間」

 年末年始、地元に帰り、元旦には久しぶりに、山奥にある氏神様にお参りへ行きました。子どもの頃は、時々父についていっていました。元旦には、地域の人が集い、焚火を囲んで、かっぽ酒を呑んで、おしゃべりしていたのを子どもながら眺めていた記憶があります。

 その慣習も、高齢化により地域の人が山に登ることも難しくなり、なくなってしまったそうです。

 せっかく登ったのでと、溜まっていた落ち葉を掃きながら「この階段は、自分たちで作ったとよ」「山道の落ち葉を下まで地域の人で手分けして掃除しよったとよ」という両親の話を聞きました。

 きっと大変なこともあったと思います。でも昔の人は、地域の人で集まることを楽しんでいたんだと思います。そして、地域の繋がりは、そういうところでも生まれていたんだろうなとも思いました。

 綺麗になった山道をみて、スッキリした気持ちで下りてきました。変わっていくことも多いですが、地元を離れていても、楽しみながら出来ることはあるかもしれない。そう感じたお正月でした。     (実)

「手伝いましょうか?」を素直に受け入れることができるだろうか

たくさんの汗をかき、ふらつきながら、ゆっくり歩く高齢者。そんな場面に出会いました。万が一、転ぶと危険だと思い、声をかけてみたのですが…。

 「荷物持ちましょうか?」「家まで送りましょうか?」しかし答えは、「大丈夫です」「人様に迷惑をかけないよう、自分だけで行動しています」と。

 かといって、「分かりました」とは言えず、一緒に歩くことにしました。聞けば数十メートル先に停めた車に向かっているとのこと。

 途中、近所の方も心配して出てこられ、口々に声をかける。しかし、誰の声掛けも「大丈夫です」と言われる。

 約1時間かけ車に到着。「ご迷惑をおかけしました。人に頼っちゃいけないと思っています」と言われました。

 確かに「できるだけ自分でやりたい」という願いはある。だから、この方の選択は正しいと思う。しかし、例えば、手助けを受け入れて、お互いに「良かったね」と言い合える選択肢もあるのではないかな‥、と。

 ただ、見知らぬ人の「手伝いましょうか?」の問いかけを、私なら素直に受け入れることができるだろうか。

 ゆっくりと動き出す車を見送りながら、そんなことを感じていました。(善)

「まほうのシール」

 電車やバスの中、飲食店など静かにしてほしい場面で幼い子どもが泣き出して焦る親。すると居合わせた人が子どもにそっとシールを渡す。もらった子はピタリと泣き止む、という「まほうのシール」の取り組みが広島で始まり、福岡にも広まっているそうです。
 もちろん、そんなことでは泣き止まない子、ビックリしてもっと泣き出す子もいるかもしれません。しかし、シールのねらいは、子どもを泣き止ませることだけではないそうです。その台紙の隅っこには、「大丈夫ですよ」と、小さく書かれています。肩身の狭い思いをしている中でこのメッセージに触れた親は、「温かいまなざしで見てくれている人がこの空間にいる」と感じ、それだけで安心できるのでは…。

 子どもが泣き止まなかったとしても、親の心を軽くできることが大事な効果だと思います。

 このまちにもそんなまなざしを持つ人は沢山いますが、伝わらず肩身の狭い思いをしている人もいるかもしれません。伝え合い・つながり合えたら、今よりもっといいまちになるのかもしれませんね。    (喜)

「地域の誰かとあなた自身の安心に」

 就職で他県に住んでいた時、大雨で、浸水や土砂崩れが起こり、数日間、市が孤立する水害に見舞われたことがありました。

 たまたま上の階に会社の同期が住んでいたので避難させてもらいました。しかし、同期がいなければ、知っている人もいない避難所に一人で行く勇気もなく不安で怯えながら過ごしていたと思います。また、そのような気持ちで過ごしていた方が近くにいたかもしれません。

 体調の変化や、自然災害など暮らしていて不安に感じることがあります。身近に住む地域の人と日頃から顔を合わせておくことはとても大切なことだとその時に実感しました。

 10月1日より、赤い羽根共同募金がスタートしました。集まった募金は様々な地域福祉活動や災害時の支援などに使われています。

 地域には、色んな方が暮らしています。誰しも不安や困ったことが起こることがあります。「困ったときはおたがいさま」「じぶんのまちを良くするしくみ」として運動している共同募金。地域の誰かとあなた自身の安心に繋がっています。(実)

「次にヒーローになるのは貴方かもしれません」

 知的障害のある高校生に起きた出来事です。

 定期的なバス移動が必要になったため、親子で何度も練習。いざ一人でバスに乗る日、お母さんも本人も不安でいっぱいでした。

 不安な気持ちで乗車すると、「どこのバス停で降りるの?」と運転手さんが声をかけてくれました。「『○○です』と言えたから安心できた」と本人。

 「本人の様子を見て、想像力を働かせてくれたのでしょう」とはお母さん。

 以降、安心してバスに乗れるようになりました。少しの理解と、さりげない声掛けで、本人の可能性が大きく広がりました。

 見た目では分かりにくい障害――。実は不安感や困り感、孤立感を感じている方も少なくありません。この子もそんな一人でした。

 そこに登場したこの運転手さんは、まさにヒーローのようでした。

 想像力を働かせ、さりげなく声掛け、見守る…。次にそんなヒーローになるのは、この記事を読んでいる貴方かもしれませんね。   (善)